2009年3月22日日曜日

 作者:崋山宏光へメールする!

(この稿は下段の続編です。上下していますが下段をまだの方は下の部分から読むと更に"をかしさ"を知るでしょう。) 

期待の本映画の上演が始まった。今日は夏の盛りの定番で意に反して"ろくろ首"、"四谷怪談!「番町皿屋敷」"であっる。子供心に「ありえねー!?」と心の中で絶句したことを鮮明に記憶している。私は自慢じゃないが怖いものがでぇーきらい!で6歳を過ぎてもなお小はまだ大事無かったが大の場合は親が側にいないと恐怖心が先立ちいきむ余裕さえなく泣きながら便所を逃走して皆に笑いを受けた。そんな私と私の可愛い妹の楽しいはずのナイトシアターが突如地獄を描写し幼い兄妹に喰らい衝いてきた。どうしようもなく銀幕を両眼たっぷりと全開させたまま心が音を立て崩れ落ち全壊した。寝たふりも大音響で迫る恐怖のサウンド効果が余計に臨場感を募らせ無駄であった。ましてや想像力の豊富な私にとって目蓋を閉じた自己世界の地獄図のほうが映画の映像を凌いで私を恐怖へと煽る。いたたまれず空間の闇を見やるとまたそこに別の魑魅魍魎が蠢き押し寄せる。感窮まって泣きたくなるが周囲の空気が押しとどめた。見たくない怪談を見るとは無く見つめ続ける。耐え忍ぶ心根が少し鍛えられていたかも知れない。"お岩さん(合掌!)"が皿を数える頃には遂に堪らず妹が「兄ちゃん。怖いから帰ろう!」といって私の袖を引く。怖いのは分っている、そして言われなくても兄ちゃんは帰りたいんだよ。でも怖いから帰れないんだ!外の暗闇を幼い妹の手を引いて二人だけで帰路の1.5キロメートルを歩く勇気など無かった。当然上映が終了して他のお客の皆と同じように映画館を出るしか私には選択の道が無かった。私は妹が大好きであった。だがこの期に及んで我侭を迫る妹は"ろくろ首”が私に襲い掛かるように見えた。ああ、この世は終わった。もうだめだ。と耳を両手で塞いで膝に伏した。あっ、と明るい展望が開けた。耳を塞ぐと音が遮られ恐怖が和らぐ。こんな簡単な解決策が残っていようとは思いもよらなかった。私は袖を引く妹に耳を塞いで伏したままの姿勢で顔だけ向けて「裕もこうしてごらん!」目を輝かせていった。妹は座り直して私を真似た。そしてゆっくりと顔だけ私の方に向けて白い歯を見せて微笑んでくれた。私はそんな妹の笑顔にとても安堵した。私も満面の笑みで妹に微笑を返した。私たちは終幕までその格好を保持して地獄が去るのを待った。

つづく・・・

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